■ 2016 小さな旅 1 ■
2016.1.28-2.1(5日間)にかけて大雪の北海道(札幌、小樽、余市、函館)そして東京横浜へ、最終日は鳴子温泉で締めくくりました。いつものように列車に揺られ、撮り鉄と駅弁鉄を楽しんできました。特に余市のニッカウイスキー蒸溜所は最高にいいですね。マッサン主題歌の「麦の歌」を聴きながらウイスキーを片手に、雪に埋もれそうな冬の余市を案内いたします。
「麦の歌」のスタートです⇒⇒⇒
1/28 雪は天からの手紙/冬は北海道でしょう!
8:06 仙台出発 → はやぶさ1号 → 9:50 新青森
10:17 新青森 → スーパー白鳥1号 → 12:22 函館
12:29 函館 → スーパー北斗7号 → 15:59 札幌
16:14 札幌 → 快速エアポート155号 → 16:46 小樽 (ドーミーインPREMIUM 小樽)
アナウンスが列車の入線を告げると、人々の影は一斉に荷物を手に取る。列車はまるで全世界のヒーローのような表情でホームに滑り込む。まるで移動する市民社会でもある。幾多の人生を雑多に積み込んでいるのだが、北に向かう人々は、皆無口だが、黙々と乗り込む姿になぜか共感を覚える。青森の道路は至る所に轍があり、タクシーの運転手から「何度も亀になった」と聞かされた。車の腹が付いては亀のように身動きできない。ドングリではないが「轍にはまって、さあ大変」だ。笑い事では済まされないこの雪である。「天気晴朗ナレドモ轍深シ」の心境だろうか。3月26日、北海道新幹線(新青森―新函館北斗間、約149キロ)が開業する。新幹線などの整備計画決定から42年余り。道民が待ちに待った高速鉄道時代がいよいよ幕を開ける。2030年度には札幌まで延びる予定で、開業による波及効果への期待が日増しに高まっている北海道を目指した。夕方、仙台から9時間かけて厳寒の小樽に着いた。小樽の夕暮れは凍てつくような雪と風で、この寒さは頬に刺さってくるようであるが、不思議なことになぜか気持ちがいい。この北海道の寒さは仙台や川崎とは違う研ぎ澄まされた鋭さがある。小樽運河のイルミネーションがこの寒さに一段と映えている。江戸時代から北前船で栄えた石造りの倉庫群がデンと構え、昔の隆盛の勢いの面影が忍ばれる。小樽で北前船が栄えた街並みの説明を聞きながら、「進取、創造、勇気」の気性を感じながら、北前船が港と港を繋いでネットワークを築いたように、新年、心の宝船を漕ぎ出してみたいものである。
★雪のロマン
六角形の結晶の形から「六花(りっか・ろっか)」。天上界に咲く花を意味する「天花(てんか)」。風に舞う花びらに例えて「風花(かざはな)」。季節が進むごとに「初雪」「早雪」「冠雪」「名残(なごり)雪」「忘れ雪」。解けずに残れば「根雪」「万年雪」。細やかに降る「細(ささめ)雪」「粉雪」「小米(こごめ)雪」。ふわふわした「灰雪」、泡のようにはかない「泡雪」「淡雪」。丸い形の「玉雪」。雪片が大きなものは「綿雪」「牡丹(ぼたん)雪」。それが少し解けると「餅雪」「べた雪」。凍った粗い雪は「粗目(ざらめ)雪」。樹木にふんわり積もれば「綿帽子」。木の枝や軒先から落ちる雪は「垂(しず)り雪」。
1/29 マッサンとエリー(リタ)との出会い/満天に輝く函館山
8:07 小樽 → 函館本線 →8:32 余市
11:50 余市 → 函館本線 →12:40 札幌
14:35 札幌 → 北斗12号 →18:18 函館(スマイルホテル函館)
豊かな水、澄んだ空気、冷涼で湿潤な気候、灼熱の炎と熟練の技によって生み出されたニッカウイスキー余市蒸留所。1934年にマッサンこと竹鶴政孝によって設立されたウイスキーの聖地の余市を訪れた。駅を降りると目の前に蒸留所がある。雪深い山々を抱く余市。頬をなでる風にはほのかな潮の香りが漂う余市。世界でもまれな石炭直火蒸留を受け継ぐ職人が重厚な味わいを守り、冷たく清らかな大気が、貯蔵庫で眠る原酒をゆっくりと育んでいるのではないかと思う。ガイドの案内で1時間近く、製造工程である乾燥・粉砕、発酵、蒸留、混和、貯蔵庫のそれぞれの棟を巡る。敷地内には竹鶴亭、リタハウスが点在している。試飲コーナーでは竹鶴、スーパーニッカ、アップルワインをいただく。かあーーーうまい。レストランの前の広々とした雪原を見ながら、朝からのウイスキーもなかなかおつなものであり、うまい、うまい、うまい。予定も1時間近くオーバーしてしまったが、ゆっくりと重厚な味わいに大満足である。ここにマッサンとエリー(リタ)に会いに来て本当に良かったとパートナと共に赤い顔をしながら微笑む。余市を後にして、2/5から始まる雪まつりの雪像造りでにぎやかな札幌へ。そして5年ぶりにロープウェイで函館山に登った。夜の山頂に立ち、眼下に広がる景色に思わず息を呑んだ。静謐な闇夜に点滅する光の群れは、まるで満天に輝く星屑のようである。久しく忘れていた感激に浸った。函館は坂のある街並みが好きで学生時代、何度も函館を訪れた。北海道という大地への憧れもあった。夜景の「百万ドル」の美しさは不変だが、ベイエリアは台湾や中国人とおぼしい観光客が目立ち賑わいを増し活気ついている。また来ようね。この季節に。語らいながら今宵の宿へと向かう。
1/30 立待岬で啄木を偲び坂の街でいつまでも眺めていたい!
14:03 函館 → スーパー白鳥28号 → 16:08 新青森
16:38 新青森 → はやぶさ28号 → 18:29 仙台
函館市電「谷地頭」から登り坂を20分程度上ると立待岬に至る。この坂の途中の墓地の一角に、石川啄木及びその一族の墓がある。啄木は、2年弱に及ぶ北海道での放浪生活の第一歩を函館の青柳町で記しており、死後、左手に啄木の好んだ大森浜を望むこの地に、友人である宮崎郁雨らの手によって建てられたものである。墓碑には、歌集「一握の砂」に収められた「東海の小島の礒の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる」が刻まれている。啄木はこの地で何を思い何を考えて、この歌を詠んだのだろうか。又、函館の人は本州を「内地」と呼んだ。<浜辺に立って、私は海をへだてた彼方の下北半島や津軽半島の山々を眺めたものだ。「あれが内地だ」>。文芸評論家で活躍した亀井勝一郎の「私の文学遍歴」で詠んでいる。函館出身の亀井は異国を眺めるように「内地」を見つめていたのだろうか。色々な思いを込めてこの地で本州を眺めていたのだろう。そして坂の街「函館の八幡坂」の上から見た港に輝くまばゆいばかりの光の連なり。山の上から見たまばゆいばかりの夜景。思い出になっても消えないように、いつまでも、いつまでも、眺めていたい。全国ご当地ハンバーガーNo1に輝いた「ラッキーピエロ」のチキンバーガーをほおばると、けたちがいのうまさが広がってきた。つくりおきはしない/冷凍ものは使わない/手つくりのこだわり/とにかく、これはうまい!!!市電を乗り継ぎ市内を巡りながら異国情緒あふれる函館を離れたくない思いにかられてきた。
1/31 春モード間近な異国情緒あふれる横浜へ
8:44 仙台 → やまびこ → 10:48 東京
17:56 東京 → はやて → 19:36 仙台
最近の天気予報はよく当たる。予報通り今週は全国的な大雪に見舞われた。新幹線の車窓からみると、その雪の残骸が宇都宮付近までだいぶ残っているようだ。しかし大宮付近からはすっかり春モードの陽ざしが注ご、雪はほとんどなく、東京に来ると気温も11℃もあり、まさしく初春である。紅白の梅のつぼみも膨らみ始め、垣根の椿の紅色があざやかである。今日で旅行4日目で東京横浜を訪れた。街並みの雑踏に足を踏み入れると、そこはまさしく今までとは違う別世界である。歩く度にせわしない人並みに疲れがどっとでてくるようだ。南北に長い日本は北は冬の雪国、南下すれば春模様といつも二つの季節が同居しているかのようである。北海道、東北の雪国という言葉には雪の量だけでなく、そこで生活する人々の風習や感情も含まれている。痛めつけられながらも雪を心から憎めないという宿命的なものがあり、苦難に耐える姿に底知れぬ生命力が潜んでいる。そこに魅力も感じる。これから始まる各地の雪まつりを通して、暖かい国から来る人たちにとって雪は宝物になり、その魅力を冬の誘客につながてほしいと思う。普段はできない別世界の雪に寝転ぶだけで大喜びする雪体験のイベントも目白押しである。暦の上では明日から2月に入り寒もまだまだ続くが、もうすぐ「立春(2/4)」でもある。日本は二つの季節が同居している今こそ、多いに楽しみたいものである。
2/1 雪深い新庄(つばさ)経由で風っこ湯煙号で鳴子温泉へ
7:15 東京 → 山形新幹線つばさ → 10:50 新庄
11:21 新庄 → 陸羽東線(風っこ湯煙号)→ 12:25 鳴子温泉
15:39 鳴子温泉 → 陸羽東線/東北本線 → 17:30 仙台
いよいよ、今日が今回の旅の最終日となった。最後は湯煙の温泉で締めくくりたいとの思いで、温泉で東の横綱といわれている「鳴子温泉」へと向かった。新幹線はいつも東北新幹線や秋田新幹線を利用しているので、今回は「つばさ」こと山形新幹線で福島経由して新庄に着いた。このルートは北海道よりも雪が多く、のっそりと積もっており車窓から見える景色は雪、雪、雪。。。。。山形県の北の方はあまりなじみがないが、以前に訪れた金山町は樹齢200年を超える杉の美林でも有名である。新庄からは陸羽東線の「風っこ湯煙号」に乗ったが平日の月曜日でもあり、3名の乗客のみで目的地の鳴子温泉で降りた客は私を含めて2人だけであり、まさしく貸し切り列車のようである。粉雪が舞う鳴子駅より歩いて3分の所にある共同浴場「早稲田の湯(¥540)」へと向かう。この浴場は早稲田の学生7人で掘り当てたことより、この名前がつけられたとのことである。2階には休憩所もありゆっくり休憩することもできる。入浴者も2人程度で休憩所は誰もいなく、ここでもまさしく貸し切り風呂状態であった。鳴子の湯は滑らかでまったりした硫黄泉質で、とにかく気持ちがよく、湯の花がまとわりつくようであり、ほっこりした気分にさせてくれる。3時間近く滞在し、今回の5日間の旅の疲れをすっかり洗い流し至福の空間を過ごすことができた。まだまだ「寒の内」で、寒さが厳しい時期であるが、立春まであと3日。節分の豆まきで鬼とともに寒さも追っ払い暖かい春を迎えたい。今回の訪問先である小樽・余市・札幌・函館・東京・横浜・新庄・鳴子と冬の季節ならではの寒さの旬を感じた旅であった。