里山の四季(冬)
冬バージョン(12月~2月)
■■■ 冬 ■■■ /Winter/Satoyama
Fuyu / 冬は里山がいちばん静かな季節。
Fuyu / しかし、一見真っ白な世界のなかにも、
Fuyu / 耳をすますとかすかな生命の吐息が聞こえる。
Fuyu / 多くの生き物たちは、木の肌に身を寄せ、枯れ葉の中に隠れ、
Fuyu / 固い繭のからに閉じこもり、ひたすら春の訪れを待つ。
Fuyu / 寒さに立ち向かう農家の人たちは、
Fuyu / 再びやってくる稲作やシイタケの仕事の準備に余念がない。
Fuyu / 冬は終わりとはじまりをつなぐ、大切な節目のときでもある。
******************************************************
7.冬の刈田のパッチワーク
しんしんと冷え込む夜が明けた快晴の朝には冷気と水分が作り出す造形美が地表を美しく飾っている。針状や、板状、柱状といったさまざまな霜柱の形状を虫眼鏡を持って覗いてみる。霜の花にまだら霜、田園の上の霜畳、地表はいたるところでキラキラと輝いている。真っ白い息を吐いて、鼻やじんじんと凍てついた田園のあぜ道へ飛び出す酔狂もたまにはいいもんだ。
6.薪ストーブは働きもの
薪ストーブは暖かい。木を燃やすのだから当たり前だが想像する以上に暖かい。それはある時はぼうぼうと、ある時はちろちろと燃える炎が見えるからだ。薪の燃える匂いも暖かさの源になる。針葉樹の燃える匂いはかすかに脂が焦げる匂いが交じる。それに対して広葉樹のサクラやカエデ、ナラの燃える匂いは生活の匂いでなく、力のある野生のにおいである。薪を焚くと部屋の洗濯物は乾くし、とろとろ優しく燃えて、料理の鍋の肉や野菜でもじっくり柔らかくしてくれ、旨みを引き出してくれる。今日も薪ストーブは洗濯物と鍋と家族の期待をのせて、家の真ん中で真面目に働いている。
5.里山のある時空
里山のある風景が、森や田畑、集落、川、道などがさまざまに折り重なる風景として作られているように、里山の歴史もまた、さまざまな技が蓄積され形成されてきた。森の木を切り、建築用材として道具や農業の資材としてつくる人々の技。田畑を作り続けてきた人々の技。暮らしを作ってきた人々の技。里山のある風景のなかに、技のある人々の暮らしの風景を感じ取り、人は技とともに生きていく。
4.雪のない穏やかな谷・川
地上のすべてが白に埋め尽くされる奥山の谷や川だが今年は雪はない。
虫たちは土の中に身を寄せ合っているのだろうか。
温かい光が地上に落ちてくる日を心待ちに
厚い雪の下で冷たい川床で、したたかに冬を生き抜く生命。
春の兆しはもうそこまで来ている。
里山は、いつもいろいろな表情を見せてくれる。
春夏秋冬は言葉通り、きめ細かな自然の変化をもたらし、季節が流れるように移り変わり里山に恵みを与えてくれる。
3.雑木林の持ち帰れない宝石
深夜、しんしんと冷え込んだ翌朝、雑木林の中に日が射す前のわずかな時間。落ち葉やかろうじて残った緑の葉を美しい光の粒がふちどっている。氷の結晶は土と水と空気がつくる幻の宝石。誰にも持ち帰ることのできない束の間の宝石でもある。
2.雑木林に木枯らしが吹いて
木枯らしがケヤキのてっぺんで揺れていた最後のひと葉を
とうとうさらって行きました。
針金のようにとがった雑木林のシルエットは、
冬の夕暮れによく似合います。
それは寒さに背中を押されて家路を急ぐ人々の窓を
ますます明るく暖かくみせる、冬のトリックなのです。
1.冬枯れの田んぼ
水も稲も消え失せて、ささくれだった土地だけが残った田んぼ。
あれほど静かだった生命の痕跡は跡形もなく消え、
モズのはやにえや、主の去ったさなぎといった
かさついた忘れ物がふたつ、みっつ・・・・・
しかし命のささやきは、静かに耳をすます人には届くのです。
それは厳冬に耐え、春の兆しをじっと待つ、
ちいさなちいさな命のシグナルなのです。